Ommadawn / Mike Oldfield (1975/2010)

 

Ommadawn: Deluxe Edition

Ommadawn: Deluxe Edition

 

 24-bit digital remastering by Paschal Byrne at the Audio Archiving Company, London

2010 5.1 Surround Mixes by Mike Oldfield

2CD+DVD

 

1975年発表の3rdアルバム。魅力的な主題や展開が散りばめられつつも楽曲構成そのものはこれまでより簡潔でキャッチーにまとめられた充実した作品となっており、最高傑作に挙げられることも多い。

 

Part 1は神秘的な雰囲気ではじまり次第に盛り上がってピークに達し、一転ピアノとリコーダーのみになる前半の展開が見事。特にピアノとリコーダーのパートに入る瞬間はそれだけでイケます。

後半は展開的には前半をなぞるようになっているがどんどん厳しく切迫的になっていき、その中でギターが前半のようなピークに達しようと途切れ途切れにあがく。あがいた末にとうとう断末魔をあげ、あとには太鼓だけが残り終了。

 

Part 2は沢山の楽器が短いフレーズを繰り返すミニマル・ミュージック風に開始し、チューブラー・ベルズが鳴らされるあたりから次第にアコギとバグパイプの通奏音へと移行していく。この後のトラディッショナルなアコギソロとバグパイプソロが最高です。

バグパイプソロが一段落つくと木管に引き継がれつつ次第に雰囲気が変化し、一転マンドリンのリードする舞曲風へ。エレキギターが乗っかってソロをとりリコーダーも加わり一気にクライマックスとなる。

そして終了後しばらくのブランクがあってエピローグ的な楽曲「On Horseback」がはじまる。語り風のヴォーカルに子供たちのコーラスが加わるフォークソングで、最後はみんなで仲良く合唱みたいな具合で全曲を終了。

なんか希望を抱いて旅立った若者が苦難の末とうとう挫折しなんやかんやあって村のガンピーさん(モンティ・パイソンのスケッチとかで有名なアレ)に落ち着く的なストーリーが思い浮かんだり浮かばなかったり。曲の好きな箇所のこと書きたかったんだけどうまく書けなくてよくわからない解説風になってしまった。

 

マイク・オールドフィールド本人によるサラウンド・リミックスは安定のクオリティ。特に本作は前2作ほど楽曲構成も弄られておらず、オリジナルの雰囲気をそのまま拡張したものに仕上がっている。

Part 2ラスト「On Horseback」のヴォーカルは、オリジナルでは他の楽器に紛れてぼそぼそと聴こえてくる感じだったのがぐいっと前に出てきた(もともとの録音品質の関係かだいぶサチっているが)。特に最後のひと言はオリジナルでは聞き取れないレベルだったのがはっきりと分かるようになった。

Part 1クライマックスのギターソロは、オリジナルでは片chに寄っているのに対し、リミックスでは前方中央に配置されている。加えてステレオ・リミックスではそれなりに音量が大きめになっているのに比べるとサラウンド・リミックスでは他の楽器に紛れがちな程度になっており、同じリミックスでもだいぶ印象が異なる。

Part 1クライマックスのギターとPart 2クライマックスの「On Horseback」が、オリジナル・ミックスとサラウンド・リミックスでバランス的に逆転しているのが興味深い。

オリジナル・ミックスのリマスターは良好。フェードアウトのタイミング等、多少の微調整はされているらしい。

 


Mike Oldfield - In Dulci Jubilo

 

ボーナス・トラックは当時のシングルや『Boxed』に収録されたものが中心。「In Dulce Jubilo」「Arginers」「Portsmouth」といった楽曲はどれもトラディッショナル・ソングのカバーで、Les Penningのリコーダーが素晴らしい。「First Excursion」はアルバム本編と共通の素材を用いたインスト曲、みたいな雰囲気。

「Ommadawn Lost Version」と題された本編Part 1のデモ音源は非常に興味深い内容で、前半から本編ではアイディアを煮詰めた結果省かれたと思われる細かな違いが散見される。後半いきなり男性ふたりの会話が乗っかってきて、何言ってるのかよくわからんけどこれは右側の男性が「Ommadawn」ということなんじゃないでしょうか(会話後半に一箇所マスター由来と思われる欠損あり)。クライマックスの展開も本編とはまったく異なり、これ1曲で完結している印象が強い。音質的にもかなり良いというか、基本的に完成形と同じ品質で収録されている感じで、別バージョンとしてふつうに鑑賞に耐えうるものです。

 

ところでDVDのメニュー画面BGMは基本的にOmmadawn Part 2の舞曲部分なのだが、あきらかにアルバム本編のバージョンとは異なって聞こえる。憶測だけど「Ommadawn Lost Version」のPart 2編とでもいうべき音源が存在していて、これはその一部分なんじゃないだろうか。えっ聴きたいんだが

 


Mike Oldfield - Portsmouth