Discovery / Mike Oldfield (1984/2016)

 

Discovery

Discovery

 

Remastered from the original master tapes by Paschal Byrne at the Audio Archiving Company, London

『The 1984 Suite』 5.1 Surround & 96kHz/24bit Stereo Mixes by Mike Oldfield

2CD+DVD

 

1984年発表のマイク・オールドフィールド9枚目のアルバム。タイトルはジャケット表に『Discovery』、背と裏には『Discovery And The Lake』と表記されている。前作B面、特に「Moonlight Shadow」の成功で手応えを掴んだであろうマイクがより大人向け風な歌ものポップスに焦点を絞って制作した作品で、以降Virgin Recordsを離れるまでの基本的なスタイルをここで確立した感も。

ヴォーカリストとしてマギー・ライリーとバリー・パーマーが参加し、アルバムは基本的に二人の担当曲が交互に配置された構成。また前作に引き続きサイモン・フィリップスがドラムで全面的に参加、プロデューサーとしても名を連ねている。

 

「To France」 マイク・オールドフィールドとマギー・ライリーの「Moonlight Shadow」に次ぐ代表曲で、ケルティックなイントロの主題から引き込まれる。歌詞はフランスとも関わりの深いスコットランド女王メアリー・ステュアートに関するもの。12" Extended Version(ボートラとして収録)もいいです。どうもアウトロに「Ommadawn」のメロディが混ざってるような気がしてしかたない。

「Poison Arrow」 バリー・パーマーががんばって高音出してるダークな楽曲。サスペンスかホラーかといった雰囲気で、「Tubular Bells」の主題がちょろっと出てくるのも狙ってのことかも。

「Crystal Gazing」 マギー曲。コーラスの透明感が好き。 

「Tricks Of The Light」 ヴァースをバリー、コーラスをマギーが担当した唯一のデュエット曲で、シングルカットもされた。マイクのギター・ソロが冴えている。

「Discovery」 バリーのヴォーカルによるヘヴィ・チューン。"When you want the score"という歌い出しでもう「あっこれは心境をわりと素直に反映してる系のやつですね」ってなるタイトル・トラック。Scoreといば我らがトニー・バンクスにも「I Wanna Change The Score」というたいへんキュートな曲がですね

Talk About Your Life」 マギーによるB面頭の曲で、「To France」と共通の主題が登場する。派手さはないがいい曲。

「Saved By A Bell」 バリーによる歌ものラストを飾る、幻想的で壮大な楽曲。サイモン・フィリップスも絶好調。歌詞は「Tubular Bells」がきっかけて商売が成功した何処かの誰かへの皮肉込み?

「The Lake」 アルバム唯一のインスト。10分越えの長尺曲にして、「Discovery」と並ぶタイトル・トラックでもある。裏ジャケに"Recorded in the Swiss Alps at 2000 metres within sight of Lake Geneva on sunny days"と表記されていることから、レマン湖の印象から着想を得たのではないかと思われる。正直マイクの長尺曲のなかでは散漫な印象がないこともないけど(聴き込みが足りないだけだとも思うが)、その分サイモン・フィリップスの活躍の場が多いのと後半の展開がたまらない。

 


Mike Oldfield - To France

出だしの部分音切れてるじゃん……

 

2016年にリリースされた今作のデラックス・エディションは2CD+DVDの3枚組。

Disk 1は本編およびボーナス・トラックで、「To France」「Tricks of the Light」それぞれの12”シングルに収録されたトラックを補完している。「To France」の12”バージョンはもちろん、「In The Pool」「Afghan」といったマイクお得意のインストものも相変わらず良質だし「Tricks of the Light」のインスト版が元々の編曲の良さもあって案外面白い。Audio Archiving CompanyのPaschal Byrneによるリマスタリングも非常に良いです。

 

Disk 2とDVDには新たに編纂されたコンピレーション・アルバム『The 1984 Suite』を収録。DVDの方は5.1chサラウンドと96kHz/24bitステレオ音源の2種類が入っているので購入以来Disk 2を再生したことがないかもしれない……

 

『The 1984 Suite』はマイク・オールドフィールドが今作『Discovery』と『The Killing Fields』(ドラマのサウンドトラック)という1984年に制作した2つのアルバムから楽曲をピックアップし自身の手でリミックスを行った、ある種のコンピレーションともリミックス・アルバムともいえる作品。本デラックス・エディションと同時に単体でLPレコードとしてもリリースされた。正直『Discovery』全編をリミックスしない代わりに『The Killing Fields』の代表曲2つも加えときましたみたいな雰囲気が無きにしも非ずだけど、単純に思いついたからやってみただけの可能性も否定できない(どうやら一連のリミックス作業はかなりマイクに裁量があったらしいので)。

アルバムの性質上完全な新曲はないものの新たにリメイクされたトラックが2つ収録されている。

Re-Discovered Trackと銘打たれた「The Royal Mile」はDisk 1ボートラとしても収録されているシングルB面インスト「Afghan」をパイプ風のシンセサイザー中心に編曲したもの。

「Zombies (Halloween Special)」は本編に先駆けて2015年10月31日にデジタル・シングルとPVで配信されたトラックで、「Poison Arrow」のヴォーカルをホーキング博士風に、歌詞中の”Somebody's”を”Zombies”に置き換えたハロウィン向けの形容し難いなにか

基本的にどのトラックもこれ以前のリミックスと同じくサラウンド、ステレオともに良質な仕上がりで、アルバムとしてはなんだかなぁという気もしないこともないけどまあ代表曲はしっかり抑えているので楽しめます。ただ一部曲間の処理とか音量バランスの調整とか雑じゃない?という気はする。

長尺曲中心の過去のリミックスと比べてサブウーファーにぶっ込まれてる箇所は少ないけど、「Étude」のシンセベースはなかなかブンブン鳴ってます。

 

DVDにはミュージック・ビデオ3本も収録しているが、「To France」はPVではなく上に貼ったテレビ出演時の映像。まあPVのほうはたしかかなりやっつけ感あるものだった。出だしの部分が切れてるのはMCと被ってたりしたからだろうか。それとメニュー画面など全体的に同じデラックス・エディションのシリーズでも初期のものより画質が向上している。

 

マイク・オールドフィールドがVirgin Records時代のアルバムをリミックスした一連のシリーズは今のところ本作が最後で、インタビューとか読むかぎりこれで打ち止めという気もする。実際80年代後半になると元からCDでのリリースを前提に制作されていることもあって、当時のミックスで十分音質もクリアだしサウンド的にもバランスが取れている。本人が弄るとこないと言うならその通りなんだろうな、という感じです。個人的にはアマロックはもちろん、レーベル移ってからのベルズ2や遥かなる地球の歌もサラウンド化希望

 


Mike Oldfield - Étude