QE2 / Mike Oldfield (1980/2012)

 

Qe2

Qe2

 

Remastered from the original master tapes by Paschal Byrne at the Audio Archiving Company, London

 

マイク・オールドフィールドの80年代幕開けを飾るアルバムであるが、なんとなく「ここらでひと休み」感もある、これまでより肩の力を抜いた雰囲気の作品。3, 4分程度のインストが多く収録され、しかもうち2曲はポップスのカバーというあきらかにこれまでとは異なる構成になっている。

以降の作品で重要な役割を担うマギー・ライリーがコーラスで初参加したほか、プロデューサーとしてマイクと共同でDavid Hentschel(ピーター・ガブリエル脱退後のGENESISの傑作群を手掛けた)が参加。エンジニアリングも前作に引き続き本職の人たちが手掛けており、全部自分でやってしまうのが基本なマイクにはめずらしい制作体制となっている。

 

QE2とはクイーン・エリザベス2号のことで、ジャケットのデザインも船体を抽象化したもの。さらにオリジナルのレコードでは舷窓部分がカットアウトになっており、インナーには船の概略図が掲載されていた。

 

アルバムとしては前作『Platinum』で導入したリズム感覚やシンセサイザーの音作りを継承しつつ、ひとつひとつの楽曲の独立性を高めたような印象。

特筆すべきはA面冒頭の「Taurus 1」で、以降のアルバムで同じタイトルを冠した連番シリーズが制作され、様々な楽曲でさりげなく(ときとしてあからさまに)主題が引用される重要な作品であり、演奏時間も本作最長の10分となっている。

他の楽曲も粒ぞろいで、マイクの作品の中でも気軽に聴けて十分楽しめる手に取りやすいアルバムに仕上がっていると思う。

 


Mike Oldfield - Wonderful Land

 

前述した「2つのポップスのカバー」はそのままこのアルバムからシングルカットされた2曲でもあり、THE SHADOWSの「Wonderful Land」は上の通りPVが制作され、ABBAの「Arrival」はなぜかストレートに本家パロディなヘリコプターのジャケットだった。

 

リマスターは例によって良好。ボーナス・トラックとしてシングルB面の「Polka」ライブ音源と「Wonderful Land」シングル版、そして「Sheba」の2012年版らしい「Shiva」を収録。

『Platinum』リマスター盤での「North Star」は女性Voが追加されていたが、「Shiva」にはあらたに男性Voがフューチャーされている。この男性Vo(マイク本人?)は意図的に加工されているからとはいえボソボソした声質で、歌い回しが妙にねちっこくて他のパートとの縦線のズレが気になり、聴いていてどうにも違和感がある。正直自分の如き若輩者には作者の意図したところがわからないです。