ストラヴィンスキー:『星の王』『春の祭典』 ティルソン・トーマス指揮ボストン響 (1972/2015)

 

Stravinsky: Le Sacre Du Printe

Stravinsky: Le Sacre Du Printe

 

Boston Symphony Orchestra

Conducted by Michael Tilson Thomas

 

Original Quadraphonic Recordings from 1972

Balance Engineer: Günter Hermanns

Remastered by Polyhymnia International B.V., 2015

 

PENTATONEレーベルによる、Deutsche Grammophonが70年代に制作したマルチチャンネル録音をハイブリッドSACDで復刻する『Remastered Classics』シリーズの1枚。

1972年1月、Boston Symphony Hallにおける録音。当時28歳のマイケル・ティルソン・トーマスボストン交響楽団によるイーゴリ・ストラヴィンスキーカンタータ『星の王』(Le Roi Des Étoiles/The King of the Stars)、バレエ音楽春の祭典』(Le Sacre du Printemps/The Rite of Spring)。

 

カンタータ『星の王』にはMEN'S CHORUS OF THE NEW ENGLAND CONSERVATORYとコーラス・マスターとしてLorna Cooke DeVaronが参加。

大編成のオケに男声合唱を加えて演奏時間は6分未満程度というある種規格外の作品で、どういうタイミングで演奏するんだこれ?となる。実際それ故か録音も少なく、これはストラヴィンスキー本人やピエール・ブーレーズと並んで同曲を代表するもののひとつだと思う。どうもこれ1曲のために合唱団を手配していると思われ、指揮者やプロデューサーの気概を感じ選曲となっている。

演奏そのものもボストン響らしいしっかりしたもので、それをSACDの4chで聴けるありがたみよ。

 

春の祭典』はリズムがしっかりしていてなおかつ決めるところはばっちり決める、素直にかっこいい演奏。盛り上がりどころだけでなく楽曲の引きの部分もじっくり聴かせてくれる。

 

ステレオもサラウンドも弦や管含め各楽器のアタック感がしっかりと出ている。その上でステレオは派手めの残響がスピーカーの間に広がるが、サラウンドではその残響が大きくリアにまわり空間を形成する。特にシンバルやティンパニはステレオだとステージの奥へ広がるイメージだが、サラウンドだと響きがリスナーを突き抜けてリスニングエリアを満たすように鳴って気持ちいい。太鼓の低音はほとんど沈み込まないものの、ティンパニ含めゴツゴツ感のある音色がいい感じ。

 

リマスタリングはPENTATONEと関わりの深いPolyhymnia International。一説にはこのシリーズのステレオ音源はPolyhymniaが手掛けていることもあってもともとのDGのサウンドからPhilipsサウンドに変わってしまっているとも言われるんだけど、自分には今のところ比較手段がないのでよくわかりませんです。