JAN & DEAN (1967)
Liberty Records傘下の廉価盤レーベル、SunsetからリリースされたJAN & DEANのコンピレーション・アルバム。
確証はないけどおそらく1967年頃、ジャン・ベリーの事故後のリリースだろうと思う。
ステレオ盤とモノラル盤があり、手持ちはステレオ。
Jan & Dean - Jan & Dean | リリース | Discogs
廉価レーベルからのコンピということでヒット曲を集めたベスト盤的なものかと思いきや、Liberty初期のシングルB面「Poor Little Puppet」にはじまり絶妙に外した、スタジオ・アルバムの穴埋め的なトラックを中心に選曲されている。
JAN & DEANの場合、60年代ハリウッド製の益体もないポップスとはいってもガレージでの自主制作からキャリアをスタートしているだけあってか、シングルA面となる主要曲以外のトラックも意外なほどきっちり作り込んであったりする。
そのうえ演奏はいわゆるレッキング・クルーなわけで、代表曲と呼べるものはほとんど収録されていないけどもこれはこれでけっこう楽しめたりします。
JAN & DEANのレコーディングには一部リード・ヴォーカルとハーモニーでP.F. スローンとスティーヴ・バリが参加しているが、これはその典型的なトラックのひとつ。
このトラックに関してはさらにスローンとバリのサーフ・ミュージック系プロジェクト、THE RALLY-PACKSやTHE FANTASTIC BAGGYS名義の盤にもまったく同じ(バックトラックが同じとかじゃなく完全に同一)音源が収録されている。
最初スローンとバリのトラックをそのままJAN & DEANに使いまわしてるのかとも思ったけど、どうやらジャン・ベリーのプロデュースのもと制作され彼もコーラスに加わっているようだ。
ついでにJAN & DEAN『The Little Old Lady From Pasadena』収録の「Old Ladies Seldom Power Shift」とTHE RALLY-PACKSの「Bucket Seats」もSEが差し替えられていたりJAN & DEAN側にバージョンによって中華風イントロが追加されている以外は基本的にまったく同じ演奏です。
今じゃ考えられないけど、そういう時代だったんやなぁと言うよりほかにない。
A-2「Who Put the Bomp」はLiberty初期のシングルA面で、ストレートなカバーではなく歌詞を独自に変更した原曲に対するアンサー・ソング。
ようするに「Who put the bomp?」に対する「We put the bomp」であり、なかなかの図々しさというか面の皮の厚さだけど、そこは持ち前の情けなさで角が立たない感じになっている。
またおそらくJAN & DEANより数ヶ月早くFRANKIE LYMON & THE TEENAGERSも「I Put the Bomp」と題して同じような趣旨のカバーをリリースしている。
原曲はバリー・マンとジェリー・ゴフィンという、ドン・カーシュナーやルー・アドラーのもとでポップ・ソングを量産していた作家たちが自らそうしたポップスのパロディとして狙って作ったお馬鹿ソングであり、単純に楽しい曲ではあるが同時に自嘲的でもある。
そういった性質の楽曲に対して、フランキー・ライモンにしろジャンとディーンにしろ、ポップスの担い手のひとりとして反応せずにはいられなかったのではないかとか思わなくもないような穿ち過ぎなような。
やっぱり伴奏が茶化さずしっかりとした演奏でヴォーカルも大真面目、後半の語りにいたっては熱弁してるからこその面白さだと思う。
見ての通りレーベルのデザインはLibertyのものを踏襲しており、ランアウトに"X"と刻まれてる(たぶんYじゃなくてXだと思う)ので1968年以前にニューヨークのShelley Productsでプレスされた盤だと思われる。
あの時代のアメリカ製レコード特有の盤質の良さともともとの録音の良さ、あと収録時間の短さゆえの余裕のあるカッティングからか、正直こんなアルバムがこんな高品質でどうするんだよって言いたくなるような心地いい音がする。
このアルバムは当然ながらCD化されたり配信されたりするような代物ではないので、とりあずこれからJAN & DEAN聴くひとはこっちをどうぞ。
だいたい同じような時期を扱ってるコンピなのにまったく曲が被ってないけど。