Night of the Hawks / HAWKWIND (1984/2001)

 

Hawkwind-Night of the Hawks

Hawkwind-Night of the Hawks

  • メディア: DVD
 

 

1984年にJettisoundz VideoからリリースされたHAWKWINDのライブビデオで、同1984年3月イプスウィッチのGaumont Theatreでのステージの模様を収録している。再生時間は55分程度。

おそらくHAWKWINDのライブ映像のなかで最もはやく販売されたもので、翌1985年には日本でも『幽星空間』の邦題でリリースされた。国内版はVHSのほかにベータもあったらしい。

 

メンバー
  • デイヴ・ブロック Dave Brock:Guitar, Keyboards, Vocals
  • ヒュー・ロイド・ラントン Huw Lloyd-Langton:Lead Guitar, Vocals
  • ハーヴィー・ベインブリッジ Harvey Bainbridge:Bass, Vocals
  • ニック・ターナー Nik Turner:Vocals, Saxophone
  • デッド・フレッド Dead Fred Reeves:Keyboards, Violin
  • クライヴ・ディーマー Clive Deamer:Drums

 

このメンバーでぱっと目につくのはやはりニック・ターナーの復帰だろう。彼はこの時期スティーヴ・トゥックのバンドのメンバーと組んだINNER CITY UNITというポスト・パンク的なグループでも活動しており、デッド・フレッドはそのICUのキーボーディスト。

HAWKWIND側は1982年の『Choose Your Masques』から1985年の『The Chronicle of the Black Sword』に至るまでの、RCAとの契約が切れロバート・カルバートとのプロジェクトが頓挫しという、FlicknifeからシングルやEPそしてコンピの類がごちゃっとリリースされてはいたものの「新作スタジオアルバム」が途切れていた時期にあたる。

結局ニック・ターナーが正式に参加したアルバムは作られずに終わったがライブ活動は精力的に行っていて、さらにライブビデオもニックが参加している期間のものだけで2本リリースしている(片方はHAWKWIND単独のビデオじゃないけど)。

 

内容

本作『Night of the Hawks』は上記の2本のうち先にリリースされたもので、おそらくHAWKWINDとしての最初のビデオリリースにあたるんじゃないかと思う。

タイトルは同時期にシングルおよびEPでリリースされた新曲「Night of the Hawks」と共通で、パッケージのイラストもトリミングされてはいるがそのEPと共通のもの。

このビデオ含め“Earth Ritual”と銘打たれた1984年ツアーに連動した企画だったと思われる。

 

HAWKWINDは70年代からアルバムにダンサーや照明スタッフの名前も記載するなどライブでの演出に独自のこだわりがあるグループで、このEarth Ritualツアーでもたくさんの照明と大掛かりな舞台セットを使用して派手にステージを演出していたはずなんだけど、ぶっちゃけ本作を観てもそういうのはよくわからんです。

というのもこの映像は一部のメンバーを中心に捉えたショットが大半を占めていて、ニック・ターナーを中心にヒュー・ロイド・ラントンやデイヴ・ブロックはある程度なにをやってるかわかるもののデッド・フレッドはたまに3人の奥に映る程度、クライヴ・ディーマーにいたってはほとんど映らない。

そしてステージ全景を捉えるようなショットが皆無なので、なんならステージの規模や舞台セットがさっぱり把握できないのである。

たぶんだけど、照明に気合が入っているがゆえにステージが基本的に暗くてしかも明るい瞬間との差が大きく、それを当時の機材(おそらくテレビ局が使ってるようなものより低予算の)で撮影しているもんだからちょっと引いたショットを撮ろうとするとすぐ光量不足になる一方でメンバーに寄ると今度は照明がついた瞬間に明るくなりすぎ、さらにストロボまでばりばり使ってるという条件のなかでどうにかバランスをとった結果がこの限られた画角と全体的に荒い画質なんじゃないかと思う。

そうした問題に比べればいかにも昔のテレビ向けライブ映像らしいよくわからない画像エフェクトやレーザーグラフィックス、一瞬再生側の問題かとドキッとするコマ落としみたいな演出なんて愛嬌みたいなもんです。

 

まあ欠点の多い映像ではあるが、演奏自体はブロックの荒いサウンドと終始黙々と弾きまくるラントンが特徴のハードロックに接近した感のある80年代のパフォーマンスを楽しめるし、プレイより存在そのものの方がインパクトあるニックだけでなくこのあとキーボードに転向するベインブリッジがベースを弾く姿やデッド・フレッドがヴァイオリンを弾く様子もちらっと確認できる。

こうして聴くとクライヴ・ディーマーのドラムはそれなりに派手さを出しつつもスマートに決めていてとても良く、一時的な参加で終わってしまったのはもったいなかった。ただこのひとってこの後PORTISHEADのレコーディングに参加したりロバート・プラントRADIOHEADのツアーメンバーになったりするので、むしろこういうバンドのレギュラー・メンバーになってもらえるような人材ではなかったかもしれないけど。

とにかくこの時期のHAWKWINDのライブの模様を垣間見られるだけでありがたいリリースなんだけど、逆に言えばそこで喜べてかつこのバンド特有のおおらかさ(当たり障りのない表現)を愛でられる一部の好き者以外にはまったく薦められるものではないのでご注意ください。

 

 

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んでこの真ん中のあきらかにひとりだけ格好がおかしいのはどちらさま? えっこれがニック?

以前ネットのどこか(この記事書くにあたってあれこれ検索してみたんだけど見つけられず)で紹介されていたこの時期のライブレポートではニックのステージ上での振る舞いやコスチュームについて批判的で、「しまいには裸にゴミ袋をまとっただけの姿になっていた」みたいな書かれ方をしていた。

そのときは「いやいやさすがにそんな笑」とスルー気味だったものの、本作の終盤ではマジでそういう格好になってるのが確認できる。なぜズボンを脱いでしまったのか。

ニックはヴォーカルとサックスを担当しつつあの格好でステージ上をのそのそと動き回っていて、ICUの曲である「Watching the Grass Grow」(ブロックのギターがやたら荒いもんだから本家以上にハードコア系のパンクっぽくなってる)とか自身が関わってる70年代の曲ではまだしも上に貼った「PSI Power」みたいな無関係の曲だとちょっと手持ち無沙汰っぽい。

そもそもニック作の「Brainstorm」ではひさしぶりに作曲者本人によるリードヴォーカルが聴けるんだけど、なんか以前より歌いまわしがやたらねちっこくなってて、BLUE ÖYSTER CULTの「Astronomy」が年代を経るごとにライブでの歌いまわしが変になっていったのを思い起こさせる(突然引き合いに出す)。

 

あと『Live Seventy Nine』で葬り去られた(再録版?なんですかそれ?)はずが以降もライブではふつうに演奏してる大ヒット曲「Silver Machine」ではなんか客をステージにあげてダンスコンテストをやってる。フランク・ザッパもやってたなぁこういうの……

 

DVD

本作は2001年にCherry Red傘下のVisionary Communications Ltd.からDVDリイシューされた。HAWKWINDのDVDはPALが多くて難儀するが本作ふくめCherry Red関連のリリースはNTSCのリージョンフリーでひと安心。

 

オリジナルのVHSはおそらくモノラル音声で、このDVDではバンドの演奏はモノラルっぽい音像だけどなんとなく広がりがあり、歓声とか電子音は左右にくっきり分かれたりもする。

パッケージの裏面には「If your system includes 5.1 audio, you should be able to switch the amplifier to activate simulated 5.1 SURROUND SOUND, to enhance this archive recording.」という表記があるので、いちおうマトリクス方式でエンコードされたサラウンド音声ではあるのだと思われる。

ドルビープロロジックIIを通して再生してみるとなんとなくぼやけてたバンド演奏の定位がよくなり、多少奥行き感がでたり歓声が後ろにまわったりするので、まあ使える環境なら使っておいてもいいかなくらい。

たぶんリミックスとかではなく元になった音声ソースを擬似的に加工してるんじゃないかと。

昔のバンドのDVDって商品価値を高めるためかよく擬似的に作れられたとおぼしき無意味どころか耳障りだったりする5.1chサラウンドの音声が収録されているけど、これはまあふつうに聴けるステレオ音声にプロロジック通すとちょっといい感じになるという程度のものでしかないので逆に良心的なんじゃないかと。

 

DVDにはオマケで「Night of the Hawks」のPVが収録されている。当時のライブ映像にスタジオ版の音声をあてたもので、レミーのゲスト参加が話題になった曲だけど映像ではふつうにベインブリッジがベースを弾いてる。

 

 

Hawkwind Live 1984-1995 [DVD] [Import]

Hawkwind Live 1984-1995 [DVD] [Import]

  • アーティスト:Hawkwind
  • 発売日: 2009/01/05
  • メディア: DVD
 

2006年にCherry Redからこの『Night of the Hawks』に加えて『The Chronicle of the Black Sword』と『Love in Space』という3つの映像作品をまとめた3枚組廉価セットがリリースされた。

それぞれのディスクは単品リリースとまったくおなじもので、当時はバラで買うよりずっと安かったので自分はこれを購入しました。まあそもそもつべに本編動画がまるまるアップされてるとかされてないとか