Silver Machine 7" / HAWKWIND (1972)
1972年6月9日リリース。HAWKWINDの2ndにしてバンドを代表する大ヒット・シングル。
バーニー・バブルスのデザインによるピクチャー・スリーブも存在してるけど手持ちの盤はカンパニー・スリーブすらない状態で転がされてたのを拾ってきた感じ。
単純明快シンプルイズベスト。どんなバンドのどんな音楽か一目瞭然ならぬ一聴瞭然。
中盤あたりで電子音ノイズが高音域に広がって再生音量次第では広大な空間を形成する。たぶんもともと入ってた電子音とオーバーダブされた電子音とついでにシンバルが重なってそういうことになってるんだけど、手持ちの盤はけっこうボロくてサーフェスノイズが多く、そのノイズとこれらのノイズがわりと近い音域で展開されるもんだからさらによくわからん広がり方になる。うるさくてたのしいです。
歌詞はロバート・カルバートにより、アルフレッド・ジャリのエッセイ「タイムマシンの作り方」に着想を得たものらしい。
あと作曲クレジットのS. MacManusやプロデュースのDoctor Technicalはどっちもデイヴ・ブロックの偽名。なんやこいつ……
Recording
このシングルは1972年2月13日The Roundhouseでのライブ音源にMorgan Studiosでオーバーダブを行ったもので、元となるライブ音源はシングルに先駆けて『Revelations: A Musical Anthology for Glastonbury Fayre』というコンピでリリースされている。
ちょっとややこしいんだけど、このコンピは1971年の第2回Glastonbury Festivalを記念してリリースされたものながら収録内容は必ずしもこのフェスでの演奏ではなく、HAWKWINDの音源も1972年2月13日The RoundhouseでGreasy Truckers主催のチャリティー・コンサートに出演した際のものとなっている。
しかもそっちはそっちで『Greasy Truckers Party』というタイトルのコンピが似たような時期にリリースされていて、もちろんHAWKWINDのThe Roundhouseでの演奏も含まれてたりするのだ。
そしてこの『Greasy Truckers Party』、さすがにオリジナル・リリースでは「Silver Machine」が被ったりはしていないのだが、2007年にEMIがCD3枚に当日のフル・コンサートを収めたボックスセットをリリースするという快挙を成し遂げた結果、今度こそばっちり「Silver Machine」まで収録されたのでした。
まあ実際のところオリジナルの『Glastonbury Fayre』や『Greasy Truckers Party』はコレクターズ・アイテムの類なので、これでやっと「Silver Machine」の元音源を含めThe Roundhouseでのライブ音源をまっとうな手段で聴けるようになったとも言えると思います。しかもマルチトラック・テープからミキシングし直されていて音質良好。よかったよかった。
というわけでこちらがそのライブ音源。最後ぶつ切りなのはこのまま次の曲に移行するから。
ヴォーカルが、まあ、まあまあまあ。この音源が気軽に聴けるようになる以前から「ライブでのカルバートの歌唱力に問題があって、スタジオでレミーのリード・ヴォーカルに差し替えられた」という話は有名だったけど、正直それ以前の問題というか、誰がどんな歌詞をどんなメロディで歌うのか詰めてない段階でなし崩し的に演っちゃってるような印象を受ける。実際突然加入することになって曲を覚える時間もなかったドラムのサイモン・キングはチャック・ベリーの曲でも演ってんのかと思ってたらしいし。
Seven by Seven
B面「Seven by Seven」はRockfield Studiosでの録音。リード・ヴォーカルがデイヴ・ブロックで中間部にカルバートの朗読が入る。
このトラックはシングルのリリースからわりと早い時点でリミックス・バージョンに差し替えられたと思われ、そういう関係でオリジナル・ミックスとリミックス・バージョンの2種類が存在している。
上に張ったのはオリジナル・ミックスで、リミックス・バージョンはテープを再生しはじめたときみたいな音のイントロが追加されてるほか、全体的にサウンドがソフトになっていて俗にSoft Versionと呼ばれたり呼ばれなかったり。
英United Artists、UP 35381。
Gramophoneプレスでマトリクスは両面「1U」。ほかに「KT」の刻印があるけど意味はよくわからない。
ここに収録されてる「Seven by Seven」はオリジナル・ミックスで、確証はないけどB面のマトが「2U」以降だとリミックス・バージョンになるんじゃないかと。
ピクチャー・スリーブ無しで盤が全体的にボロくてサーフェスノイズ大きめでプチノイズもちょこちょこ入るけど、わりと初期に生産されて生き残ってきた盤なのかもしれない。
Top of the Pops
「Silver Machine」の大ヒットをうけてBBCのTop of the Popsへ出演を依頼された際に制作されたPV。
HAWKWINDは当て振りパフォーマンスへの拒否感などもあってスタジオへの出演を断り、代案が実際のライブの様子を放送することだったらしい。
撮影は1972年7月7日Dunstable Civic Hallで行われ、音の方はシングルの音源にところどころ当時のテレビ番組らしい歓声をかぶせて使用。
この映像は結果的にダンサーのステイシアはもちろんのこと、ディック・ミックやデル・ダトマーのステージでの様子を伺えるほぼ唯一の貴重なものになった。
ステイシアは当時のライブの様子を捉えた写真でほとんど裸に近い姿にボディペイントのみでパフォーマンスを行っていることが確認できるけど、ここではBBCで放送することを考慮してか別にそういうわけでもないのか服を着用している。
これが続くシングル「Urban Guerrilla」のPVになるとおもいっきりトップレスで踊る姿を映してたりするものの、さすがにYouTubeにはアップロードされていないっぽい。
Reissue
「Silver Machine 」はHAWKWINDを代表する1曲なだけあってレコード時代には手を変え品を変え再発され、葬られても墓場から蘇って何度もリバイバルヒットしている。CD時代に入ってからもいろんなコンピで聴けるので、入手には困らないと思う。再録版?知らない子ですね……
記事冒頭に貼ったのは往年の名コンピ『Stasis - The U.A. Years 1971-1975』のもので、そもそも2ndアルバム『In Search of Space』のリマスター盤にボーナストラックとして収録されてたりも。
気になるのは2011年『Parallel Universe: A Liberty / U.A. Years Anthology 1970-1974』で、これ自体は貴重な音源を多数収録しブックレットも充実している良質なコンピなんだけど、ここに収録されている「Silver Machine」の新規リマスターはこれまでよりあきらかにノイズがひどくなっている。マスタリングの不備なのか、いい加減劣化が進んでいるであろうマスターの現状を伝えるものなのか。
「Seven by Seven」のほうもミックス違い含めフォローされていて、『Stasis』にはリミックス・バージョンが、『In Search of Space』ボートラにはオリジナル・ミックスが収録されてるほか、『Parallel Universe』にはこれまで未発表だった別ヴォーカルのものが収録されている。