TenLem

「TenLem」は『レミングス』のBGMのひとつ。

レミングス』はもともとAmiga用に開発されたパズルゲームで多くのパソコンやゲーム機に移植されたので、BGMもそれにあわせてやたらバリエーションがある。

オリジナルのBGMはブライアン・ジョンストンとティム・ライトという方々が手がけたらしい。

 

レミングス - Wikipedia

 

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Amiga版。イギリスの数え歌「Ten Green Bottles」にショパンの葬送行進曲とワーグナーの結婚行進曲をくっつけたもの。

自分は「Ten Green Bottles」をこのゲームではじめて知った。YouTubeで検索するといかにも海外の子供向けっぽい動画がわんさかでてくる。

 

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こういう歌だからつまりBGMのタイトル「TenLem」はボトルのかわりにレミングが(例のSE)。

そういや『レミングス』のBGMにはほかに「She'll Be Coming 'round The Mountain」も使われてるけど、こっちも「Ten German Bombers」なんて替え歌にして数え歌がありました。

 

Ten German Bombers - Wikipedia

 

Twangといえばデュアン・エディ。

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いちばんTwangしてるDOS版。サイケっぽい気もしてくる。

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さて、この『レミングス』は1991年のうちに日本のSUNSOFTからスーパーファミコン移植版が発売されいる。

BGMははたけやまともみ氏により、どれもスーファミの音源に合わせた巧みな編曲が施されていてほかの各種移植版とは一線を画すものになっている。

 

「TenLem」もサックス風の陽気なリードをフューチャーし葬送行進曲と結婚行進曲の音色もそれっぽいものを使い分けていっそうコミカルな雰囲気になっていて、操作をミスってレミングが次々に落下していく様を呆然と眺めたりふつうに嫌気が差して全員爆破しはじめた際に最適。

なのだけど。

 

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「Ten Green Bottles」のメロディラインに改変というか整地が施されていて、よりスムーズな印象になっている。

たぶんはたけやまともみ氏は原曲を知らないままこの編曲をしたんじゃないだろうか。

 

 

 

 

 

SONY UBP-X800M2(前編)

 

以前使ってたBDプレーヤーが壊れて以降あれこれ検討したりしなかったりした結果、ソニーのUBP-X800M2というプレーヤーを購入しました。

 

 

とりあえず自分がこれ系のプレーヤーに求める条件を書き出すと、

  • BD、DVD-Video、CDに加えてSACDのマルチチャンネル層を再生したい

……以上ですね。箇条書きにすることなかったわ。

 

このプレーヤーはそのSACDに加えてなんとDVD-Audioの再生にも対応しているというのが最大の魅力でありセールスポイントと言っても過言ではないだろう。統計でいっても自分の周囲でこの機種を買ったのは自分ひとりで自分はDVD-Audio再生が決め手だったからつまり100%、購入者全員がDVD-Audioの再生を視野に入れてこの機種を選んでいるということになる*1

 

AV情報関連のサイトとかを見るとだいたいエントリークラス的なポジションだけどソニーが国内で販売しているプレーヤーのなかではハイエンドというよくわからん位置づけで、長らくデジタルで出力しちまえばなんとかなるやろと安物BD/DVDプレーヤーしか使ってなかった自分にはちょっと高い買い物となります。

ソニーのAV機器ラインナップってデノンとかヤマハみたいに安いのから高いのまでずらっと取り揃えてるんじゃなくて、最上位機種でその2メーカーでいうところの中堅どころあたりの「最新の機能がだいたい揃ってて性能もお値段もそこそこ」ぐらいな感じなのですね。いちばん高いAVアンプでもDSDのダイレクト再生に対応してないのがちょっとさびしい。

 

というわけで着弾。本体は薄さのわりにけっこうずっしりしてて低価格帯の機種との作りの違いを感じる。

がんばって設置したけど前面のツヤツヤしたパネルにスマホのカメラをかまえた不審者や床に散らばった洗濯物が映り込むので本体の写真は無しの方向でお願いします。

 

UBP-X800M2の出力端子はHDMIと同軸のみでアナログ出力をすっぱり切り捨ててしまっている。かわりに通常のHDMI出力に加えて音声信号専用HDMI出力というマニアックなものを搭載しているのですが、とりあえず今のところはAVアンプと普通にHDMIケーブル1本で接続しただけで試してないです。

あと本体前面にちっちゃい電源ランプ以外なんの表示窓も無いのでオーディオ目的で購入された方々には不評っぽいけど、デスクまわりにパソコンやらオーディオやらをひとまとめにしてる自分は特に困ってない。

 

 

CD/SACD/DVD-Audio

とりあえず手近にあったそれぞれ特徴がありそうな音楽ソフトたちをあれこれ再生。

 

小室哲哉とMR. BIGはマジでこのときちょうどそこにあっただけ*2なのでスルーとして、ブーレーズのハルサイとLa Spagnaを再生してみたらあきらかに以前と比べてノイズが減って鳴らしやすくなっていてびっくりした。

 

自分が使ってるAVアンプはYamahaのRX-V479という当時非常にお安く入手できた機種で、機能的にも性能的にもかなり健闘しているとはいえやっぱりお値段相応の非力さがある。

これと低価格帯のBD/DVDプレーヤーでそれこそ写真のブーレーズのようなダイナミックレンジを広くとった録音を再生すると、ボリュームを上げていっても十分なレベルに達する前に「サーッ」という高音域のノイズが大きくなって聴けたもんじゃなくなってしまい鳴らしきれない、という感じだったのですよね。

自分はこれをどちらかというとAVアンプの出力不足が大きな原因と受け止め、まあ安かったし仕方ないよな〜そのうちもう一段くらい上のグレードの機種がほしいもんですねぇとか考えてたんだけど、プレーヤーをUBP-X800M2にしたらなんかノイズが無くなって静かになってしまいました。

これならクラシックの初期デジタル録音とかの、アナログ録音に比べてノイズが少ないからってダイナミックレンジ極端に広くとったらがっつり音量上げて鳴らさないと(かつそれが可能な出力のある再生装置じゃないと)ぼんやりした音でしか再生できなくなっちゃいましたみたいな音源でもわりと対応できるんじゃないかと。正直「安いプレーヤーでもデジタル出力できればだいたいOK」という気持ちでやってきた自分にはちょっとショックですらある*3

 

ブーレーズストラヴィンスキー春の祭典』1992年盤はもうちょっと音量バランスとかがこなれた時期のものではあるんだけど、これはこれでスピーカーにしろヘッドホンにしろある程度以上出力に余裕がある再生機器でしっかり鳴らさないとオーケストラが実際に鳴らしてる音よりそれに付随する響きの印象が強くなって、なんとなくぼんやりした「ヌルい」演奏という感想になりがちだと思う。

それなりの音量で鳴らしてるつもりのところからさらに思い切ってぐいっと音量を上げていくとある段階から演奏のディテールや中低音の質量と残響のバランスがとれてダイナミックな鳴り方をするようになる、んだけどそうそうそんな大音量再生できるもんじゃねーよという。この時期のDGとかあるいはTelarcやLinnあたりの「残響過多」「残響に癖がある」と言われがちな録音って、その残響と楽器の実音のバランスがとれるところまで音量を調整してったときに本領を発揮するんじゃないかと思いつつ、それってかなりの音量ということであり、ちょっと自分にはどうしようもない感じ。

そういった諸々を踏まえてブーレーズのこの録音は現代オーケストラのダイナミズムにそれこそストラヴィンスキー本人の録音に通じるあの楽曲本来の舞曲としての軽快さを取り込んだ、ガチガチだったりやたら力押しだったりというのとはまた違った意欲的なものなんじゃないかと思う。

ところでおなじブーレーズクリーヴランドの組み合わせで名盤と名高い(頭痛が痛いみたいな書き方しやがって)旧録音とおなじ1969年に『春の祭典』を代表する名演と言ってしまいたいエルネスト・ブールと南西ドイツ放送響の録音が存在していて、昔だったら聴こうと思ってもそうそう音源を入手できるものではなかっただろうけど今ならサブスクとかでほいっと再生できるのでみなさんぜひ聴いてください。

 

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ブールがボウルになってるの、以前ミヒャエル・ギーレンがマイケルくんになってたのとおなじ味がする

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こっちはフランスものというかパリものCDセットで、3枚目のディスクが上のアルバムと同一内容

 

閑話休題

 

アップスケーリング

UBP-X800M2にはCDの16bit/44.1kHz音源(および圧縮音源)をハイレゾ相当までアップスケーリングする「DSEE HX」という機能も搭載されてるんだけど、目隠しをして他人にオンオフを切り替えてみてもらったりしたわけじゃないので「なんか・・・良くなった・・・気がする・・・!」以上のことは言えない。

写真のブーレーズ小室哲哉で試した感じ、この機能を使ってると残響というほどには離れきってない実音の周囲に付随する響き(それってやっぱり残響では?)がよりなめらかで柔らかくなったような……特に音量を上げていった際にそれがはっきりするような……でもべつにCDそのままでもわりとそういう感じなような……

どちらかというとCDより圧縮音源を用いた動画等の再生時に効果的なのかもしれないけど今の所あんま実感できる使い方をしてません。

 

SACD

La SpagnaのSACD層ですが、低価格帯AVアンプであるRX-V749は当然ながらDSDのネイティブ再生には対応していないのでプレーヤー側でPCM変換して出力しています。

RX-V749もDSDをPCM変換しながらの再生に対応しているけど処理能力の問題なのか高音域にずっと「サーッ」って他のメディア再生時より大きめのノイズが存在し、たまに「プツッ」ってノイズが入ったりもする。

※書き上げてから気づいたんだけど、これもあるいはAVアンプじゃなくて前のプレーヤーのDSD出力の限界だった可能性があることを失念してました。

UBP-X800M2側での変換はさすがにノイズもなく静かで安定していて、欠点はハイブリッドSACDの再生する層(マルチch層/2ch層/CD層)を切り替えるのにいちいち設定画面に入らなきゃならないことくらい。

あとUBP-X800M2側でDSDをPCM変換して再生したところAVアンプ側の信号情報は「176.4kHz」表記になってました。これはDSEE HXを切り替えても変わらず。なおこのAVアンプは信号情報の表示画面にビット深度が出ない。

AVアンプとプレーヤー間はHDMI接続だからこの品質として同軸出力の方だとどうなるのか気になるところではあるんですが、それを確認するためにわざわざ普段使わない同軸を繋げてあれこれやるのが億劫なので手をつけてません。

 

いちどSACD2ch層を再生する際にステレオの片方のチャンネルだけが両方のスピーカーから再生される疑似モノラルみたいな変な状態になったのだけど、AVアンプ側を再起動したら治ったのでそっちの問題かもしれない。

再生してたのがちょうどモノラルとステレオが混在しているTHE ROLLING STONES『Singles Collection: The London Years』のDisk 2からDisk 3にかけてだったんでしばらく「あれ、モノラルだとミック・テイラーのギターめっちゃ音小さいんだな」とか「やっぱこっちのOut of Timeはモノラルだと自然だよな」みたいな感じで気が付かなかった。

 

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正常な状態で再生したOut of Timeは残念ながら?この通りのステレオ・ミックスだった。まあこのミックスにどうこう言うんだったらふつうにクリス・ファーロウの聴けよという話ではある。

 

DVD-Audio

といったところで本日のメインディッシュであるDVD-Audio、とりあえずはKING CRIMSONの『In the Court of Crimson King』40周年盤(の5.1chリミックス音源)なのですが、いや最高ですね。

 

ちゃんと「DVD-AUDIO」として認識してる証拠写真。“待って”たぜェ!!この“瞬間(とき)”をよぉ!!*4

DVD-AudioとDVD-Videoは設定画面から切り替えられます。

 

ぶっちゃけ「CDとハイレゾ」みたいな微妙なものやなんなら「きっちりエンコードされたmp3やAACロスレス」みたいなのと比べてDolby DigitalやDTSとロスレスだとわりと違いが出るので逆に「高音域の伸びやかさや滑らかさがぜんぜん違う」という当たり前のことぐらいしか書けない面もあるんですがそこはそれ。

とりあえず「Moonchild」インプロ前半でリアスピーカーまで展開するヴィブラフォンの響きが、以前のプレーヤーでDTS再生した際には完全に限界状態でノイズまみれになってたのがUBP-X800M2でMLP Lossless再生だと綺麗に(録音段階からある程度歪んでるけど)鳴らしきれる!うれしい!!気持ちいい!!!現場からは以上です。

でもちょっと冷静になって確認してみたらそもそもプレーヤーが良くなった結果DTSも以前と比べてかなり健闘するようになってますねこれ。MLP Losslessと比べるとあきらかに高音域がガサガサしてて残響が伸び切らずにかき消えてしまう感じがするけど、それでも24bit/48kHzなだけのことはあった。

 

ちょうどこのUBP-X800M2導入にあわせてAV機材詰め込んでる棚の配置とかを再検討してる*5ので、それが終わったらサラウンドのセッティングをやり直してあらためていろいろ聴いてみます。あと関係ないけどクリムゾンの最高傑作は『Lizard』か『Larks' Tongues in Aspic』で選べない派です。そんな中途半端な派閥あるか?

 

プリエンファシスCD

ついでに引っ張り出してきて確認したプリエンファシスかかってるCD。

このREO SPEEDWAGON『Hi Infidelity』は1982年10月1日に日本でリリースされた、つまり世界で最初に発売されたCD数十タイトルのうちの1枚。この時期のCDはプリエンファシス仕様になってるものが多いんじゃないでしょうか。

プリエンファシスCDはものすごくざっくり言うとレコードでのイコライザーカーブとおなじ、高音域をわざと強調した状態でディスクに記録しておいて再生時にそれを復元することで音質の劣化を避けるというCD初期にあったやつで、プレーヤーの性能が良くなるとともに必要なくなった的な流れだったと思った。

 

再生してみたら画面上にこれといった表示は出ないながら、聴いた感じちゃんとデコードされたまともなバランスの音になっている。

多少まったり気味だけどそれなりにクリアで伸びやかな高音域と、小音量だとスカスカだけどボリュームを上げていけばそれなりに厚みの出る中低音で、手持ちのUS盤レコードのドンシャリ系爽快サウンドとはまた違った綺麗な音作り。いま聴いてもけっこう楽しめるというかこれあきらかにプレーヤー自体が良くなった恩恵を受けまくってるな。

ちなみに本来のエンファシスはアナログ回路でもって処理する想定のものだったはずで、本機を含め現在のプリエンファシスCDに対応している機器はおそらくほとんどがデジタルでその処理を再現してると思われるので、そのあたり気にする人は気にするのかもしれない。

 

続く

ほんとはDVD-VideoとかBDとかあえて目を背けてきた他の機能とかについて書いておきたいんだけど、いつまで経っても着手できずここまでの内容すら放置しすぎて9月中にアップできなかったのでとりあえず投稿しちゃいます。水星の魔女みたら続き書くから…あっでも最近労働で体力削られるあまりFGOも触れてなくて…イベントは参加できなくてもガチャだけは回すのが自慢だったのに前回はそれすらできなくてですね……

 

 

*1:そもそも俺の狭い交友関係内でレコーダーでもなけりゃゲーム機でもない再生専用機なんて持ってるやつがほぼいないという説もある

*2:MR. BIGはこの前届いたばっかり、小室哲哉は知人に「歌手としてもフローレンス・フォスター・ジェンキンスと並ぶ逸材」とかテキトウなこと言ってプレゼンしたとこだった(どっちに対しても失礼すぎる)

*3:「こ、こんなの覚えさせられたらもどれなくなっちゃうっ……(ビクンビクン」とか書きかけたけどさすがに自制心が働いた

*4:とはいえDVD-AudioってSACDやBDと比べれば多少は融通が利くメディアなわけですが

*5:「ラックあっちに動かすか〜」となにげなく引っ張ったらケーブルの長さが足りてなくてあわや落下事故だっただけ

プライムビデオで観た映画メモ

どっかにメモっとかないとぜったい後でなに観たか忘れるし、逆にタイトルと感想ひとことでもメモっとけばあとでわりと思い出せる(場合もありうる)のでやっとく。

 

 

トップガン』(1986)


トップガン・マーヴェリック』の予習に観たやつ。

OPについて前回の記事で「「Top Gun Anthem」のまだギターが入ってこない前半部分」って書いたあと再確認したら正確には「ギター抜きのバックトラック」でした。こいつをひたすら繰り返して焦らされるとべつに嫌いなわけじゃないけど特別好きでもない「Danger Zone」で「よっしゃきたーーーっ!」という気分になる。

BGMとして流れるのはケニー・ロギンスとかBERLINあたりながら劇中で登場人物たちに歌われるのはTHE RIGHTEOUS BROTHERSだのジェリー・リー・ルイスだのという古さ。

特にマーヴェリックが「You've Lost That Lovin' Feelin'」を歌って女の子にアプローチする場面は「こいつ何やらかすかわからんから嫌だな……」と身構えてたらこれだったので思わず笑っちゃって、しかもサビ前のコーラスが入ってくるところでなんとなくあわせて歌ったら劇中の他の客たちも歌い出したのでたぶん俺はあの場に居ました。なおその後の女子トイレ突撃でスッと冷静になった模様。

 

マーヴェリックは言うなればとんでもねーいたずら小僧なクソガキなんだけど、演じるトム・クルーズがなんか異様に可愛くてこれじゃ男も女もみんな「まったくしょ〜がね〜な〜」ってなるよねという謎の説得力が出てる。いや本来は可愛いからじゃなくてそれでも評価せざるを得ない実力があるとか、マーヴェリック本人は知らないことだけど彼の仲間を助けるために危険を顧みない姿勢が彼の父親を知る上官たちに刺さるとかが基本的な筋のはずなんですが。

そのくせ両親の話で心の傷をチラつかせたり相手がその気になってきたら引いてみたりと立派に恋の駆け引きしやがってなんなんだこいつは。とりあえずアイスマンがギャグこそつまんないけどあれでけっこう気を遣うタイプなので、そりゃアイスマンのほうがギャグはつまんないけど出世するというのはわかる。

 

飛行機に関してはよくわかんないながら主人公たちの機体がF14という名称で、これは翼が可動するのでちょくちょくシルエットが変わるということさえ認識できてれば、登場機体自体は絞られてるのでそれなりに状況を把握できているかのような気分で観てられた。飛行機がたくさん飛んで動き回ってるととりあえずうれしい。

 

プライムビデオにあるのはたぶん2005年頃のリマスター版。DVDはこの時期を境に仕様の異なる盤がリリースされていて、BDのほうもたぶん同一ソースなんじゃないかと。

オリジナルの音声はたぶんDolby Stereoで、リマスターに際して音声もあらためて5.1chで制作し直されたと思われる。逆に言えばこれより古いDVD収録の音声は形式こそおなじ5.1chでもよりオリジナルに近い音源なんじゃないだろか(憶測まみれ)。

あと2020年頃に出たUHDBDにはDolby Atmosも収録されてるっぽい。

 

 

『07/ドクター・ノオ』(1962)


007シリーズって昔ちょろちょろ観たはずなんだけど、覚えてるのはゲルト・フレーベの腹が飛行機の窓に引っ掛かるシーンと黄金銃の組み立てシーンとジャパニーズNINJAが天井裏から糸を垂らして毒を盛るシーンくらいなので、せっかくプライムビデオにあるし最初から観てみるか〜と再生してみたもの。たぶん初見。

 

ジェームズ・ボンドのテーマ自体ぶっちゃけオリジナルよりこっちに聴き馴染みがある状態。

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まるでTHE VENTURESのようにキレの良い演奏(直喩)。

 

本編がはじまって「おお、これが第一作のオープニング……」と思ってると急にいかにも南国っぽい陽気な音楽に切り替わって驚く。来たぜジャマイカ レゲーじゃないか(ロックステディもまだな時期だろ)。

そういやあっちのほうが政治的に注目を集めたのとか文化面でいうなればアメリカにおける「異国情緒」みたいなのが流行したのもわりと近い時期なのでは。いやこれはイギリスの映画ですが。

 

ジェームズ・ボンドというキャラクターをはじめてまともに観たわけだけど、自身の立場とか任務のわりに*1看板しょって歩いてるようなある種の怪人物で、しかも無神経とか無防備なんじゃなくて自分が狙われるのをわかった上でわざとそのように振る舞って手を出されるのを待ち構えているタイプの趣味の人なんやろーなーという印象だった。ちょっとした運の良し悪しでサクッと殺されるだろうしそれこそ気が緩んで口をつけたコーヒーに案の定睡眠薬が盛られてるくらいの人生綱渡りっぷりでしかも自ら進んでそういう状況を作り出してるまであるみたいな。

どうも島を買い取った中国系の男が怪しいって流れからあからさまに欧米の考えるアジア系美人みたいなやつに誘い誘われ当然のごとく罠をはられても嬉々としてかいくぐるし、なんならそのカーチェイスシーンがいちばん楽しそうじゃないかこいつ。

ジェームズ・ボンドのそういう在り方が通用するくらいの緩さがこの作品のリアリティラインで、なんとなれば例のドラゴン戦車を「な、なんてこった…さすがのボンドもこいつにゃかなわないぜ……」くらいの気分で観るのがちょうどいいのかもしれん*2


ドクター・ノオはむこうの俳優さんを中国系に寄せようとした結果今やったらえらい騒ぎになりそうな状態になってるけどまあ60年前の作品やしこれはこれでいい感じの雰囲気出してる悪役。最後は「いやその義手のパワーで鉄柱に握った跡残しながら這い上がってくるんじゃないのかよ!握力アピールはそのための伏線では?」とか思ったり思わなかったり。

 

なんか嫌味っぽく読める書き方になっちゃった気もするけどそれだけわいわい言いながら観てたということで(ひとりで)、セリフや人物の振る舞いに気が利いていてちゃんとおもしろい娯楽映画でした。こんだけおもしろけりゃそりゃシリーズ化するわ。

めちゃくちゃ有名なドクター・ノオとボンドのマティーニに関するやり取りが実際に観たらなんかすごくグッとくる会話だったり、CIAのにーちゃんとのスーツの仕立てに関するちょっとしたやり取りとかもなんかよかった。

ボンドの拳銃を交換させられるシーンも、これ自体印象的なうえにどんなキャラか知ったあとだとこいつベレッタの威力の低さや不発でピンチって状況を楽しんでたんじゃないだろうな……?と思える。劇中での拳銃に関する描写と実物ではだいぶ話が違ったりもするらしいが。

 

ところでスパイものといえば『ミスター・モト』とかリブートしてみたり……いや無理か。せめて原作を日本語で読めるようになるといいんだけど。

 

『サイコ』(1960)

 

有名だけど微妙に観たことなかったので。なにが微妙って、そもそも有名すぎてネタバレもへったくれもありゃしない作品なうえに昔テレビでリメイク版をそうとは知らずに途中から観たことがあるんですよね。

その時はテレビを付けたらちょうど探偵さんがなんか調査してるっぽい場面で彼はそのまま屋敷で何者かに襲われてしまい、沼に沈んでた車を引き上げるシーンあたりでやっと「あれ、これってモノクロじゃなくてカラーだけど『サイコ』ってやつなのでは?」と気づいた次第で(最後の最後じゃねーか)。

 

あらためてオリジナルを最初から観たことで、本来はいかにも主人公っぽいお姉さんが大金を持ち逃げしてさてどうするどうなる!?というサスペンスかと思いきや中盤で大金とは無関係にいきなりぶっ殺される、しかもたぶん当時としてはかなり挑戦的(むしろ挑発的?)だっただろう念入りな描写で、というデカいどんでん返しのある作品だったことがやっと認識できた。これあれだ、古典的名作が古典的名作であるがゆえに発表当時衝撃的だったギミックが割れちゃってる状態で作品に触れることになるパターンのやつ……!

 

バーナード・ハーマンの音楽もあまりにもパロディを耳にしすぎていたせいではじめてなのに「あれ、こんなんだったっけ?」ってなったりしてた。はじめて観てるのにこんなんだったもなにもあるか。

全然関係ないけどこの人がロンドンフィルを指揮したホルストの『惑星』が、多分に演出的ではあるもののこの曲にもともと内包されているうねうねしたものを引き出した濃い演奏でとても良いです。

 

とにかくアンソニー・パーキンスの演技とか映画としての見せ方が魅力的で、彼が画面に現れた当初のちょっとナヨナヨしてそうで吃りはあるけど親切な好青年みたいな感じのとこから段階を踏んで変化している印象操作が最高。沼に車を沈めるシーンでの表情の変化が最後にほぼ答え合わせされるのもいい。あの最後のシーン、本編観るまではたんにドクロっぽいものとしか認識してなかったけどつまり母親の顔(ちょっと乾燥気味な)がオーバーラップしてるのか。

アンソニー・パーキンスって自分は子供の頃に「オールディーズ・ベストヒット」みたいなやつで聴いた「Moonlight Swim」を歌ってるひとと認識していたので、じつはわりと最近までこのノーマン・ベイツ役のひとと同一人物だということがわかってませんでした。

あるいはアメリカだと俳優としての「Anthony Perkins」表記と歌手としての「Tony Perkins」表記で区別してたのかも知れないけど、自分の記憶にあるCDにはふつうに「アンソニー・パーキンス」って表記されてたような。AnthonyとTonyとなるとどうしてもGENESISが思い浮かびますね(本当に関係ない)。

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あとオープニングのホテルの一室で密会する男女の部屋に窓から入っていくカメラがわかりやすく「覗き見」という欲望を具現化してるのと同時に、逆に本来なら不愉快で見たくもねえ男と女のあれやそれを半ば無理やり覗き見させることで「これからこんなもんじゃないもっと不愉快なものをお見せしてさせあげますよ」とでも宣言してるかのようでもあってよかった。ある種の不愉快さって画面越しならエンターテイメントだもんなぁってなる。

 

この映画、オリジナルは当然モノラルだろうけど配信されてるのはなんか音が後ろから聞こえたりもするのでリマスターとかレストアとかされてるんだと思う。

あとこれって続編あるんすね。しかもちゃんとアンソニー・パーキンスが出演してる……

 

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)

 

以前CATVで『ゾンビ』(Dawn of the Dead)を放送してたとき何気なく観てみたらやたら面白くて3回くらいリピートしたので、ほかの作品も観なきゃなあと思ってたらこれがあった。著作権がアレしているおかげだろうか。

 

『ゾンビ』の前作でもあるからゾンビの身体能力もそんなもんだろうと思ってたら冒頭のやつがけっこうアグレッシブで、走らないけど歩く速度はけっこう早く(正直小走りくらいしてない?)石で窓ガラスを割る知能がある。他のゾンビも刃物を使ったりするし、全体的な脅威度が『ゾンビ』より上じゃない?

 

いちおう主人公の片割れなのかも知れないお姉さんはお荷物系ヒロインというか、屋敷までの逃走劇で完全にキャパオーバーしちゃって以降は音の出る置物くらいな感じ。まあイラつきポイントを貯める用のキャラになってるんだけど『ゾンビ』のお姉さん以上になにも知らない状態でいきなりひどい目にあってる上に時間の猶予がほぼ無かったから……

もう一方の主人公っぽい青年にここまでの経緯をまくしたてるシーンで、冒頭のゾンビに遭遇した際に実際は黙ってやり過ごそうとしたのを「謝ろうと思って声をかけたら……」なんて言ってるのが、しょうもないところで見栄を張りやがってという可笑しみで逆に状況のしんどさが際立っていい。

 

モダン・ゾンビ第1作にして「手近なもので籠城戦の準備」「立て籠もった内部での仲間割れと、それに拍車をかける銃の存在」「生死不明(たぶん死んでる)な身内との再会」「ゾンビに傷を負わされた子供とその親」あたりのキーワードで欲しいものぜんぶばっちり取り揃えてあるので嬉しくなっちゃう作品。

フレッシュな内蔵パクパクもさっきまで元気にガソリンこぼしてた気のいいにーちゃんねーちゃんの顔が思い浮かんで◎。

クライマックスの崩壊感に最後の観てて思わず制止したくなるけどいざ自分がその立場だったらじっとしてられるかとなるとなんとも言えない青年の行動と、いやー充実した作品でした。

 

といった感じでニコニコしてるとエンディングで急に社会派っぽくなってさてどんな顔したもんかとなる作品でもある。

 

 

『武器人間』(2013)
武器人間(字幕版)

武器人間(字幕版)

  • カレル・ローデン
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ナチス驚異の武器人間軍団 vs またしてもなにも知らないソ連兵たち。原題は『Frankenstein's Army』。

 

フランケンシュタイン博士の誇るビックリドッキリ武器人間が惜しげもなくバンバン登場してそれぞれ事情はあれどだいだいロクでもないソ連兵たち(とついでにドイツ兵たち)が物理的にひどい目に合うお話。それだけだしそれで十分みたいなやつ。

「私は衛生兵よ(キリッ」からの脳みそポロリとか博士のそれにしたってクソ雑な手術とか笑いどころもたっぷり。あのプロペラエンジンに手足くっつけたみたいなやつはなに考えて作ったんだ。

 

そういえばナチスの手で改造人間として蘇ったリヒャルト・ワーグナーフランツ・リストが宿命の対決を繰り広げる『リストマニア』という映画があって是非観てみたいんだけどBD化とかされんもんですかね。そもそもDVD化されてたっけ?

 

 

最後に

感想は1行くらいにしとかないと後で読み返したとき書けたことより書けなかったことのほうが気になっちゃうからやめとけと言ったのに……

 

 

*1:いうてスパイのイメージって昔読んだウォルフガング・ロッツ『スパイのためのハンドブック』由来のものくらいしかないけど

*2:いやあそこはさすがに笑いどころでもあるんだろうけど、でも仲間が死んどるんやでともなる

近況メモ

ブログが更新できてないと後で見たとき「この時期生きてたっけ?」てなるので近況をメモっとくやつ。

 

BDプレーヤー逝く

ちょうど『フレンチ・コネクション』の特別編DVDとフリードキン監督自らカラーコレクションとかを弄ったというBDをぼちぼち本編比較したり特典見たり聞いたりしようかというタイミングでこれまで使っていたBDプレーヤー、PioneerのBDP-170がうんともすんとも言わなくなってしまって出鼻をくじかれ、しかも自分はこの子にBDとDVDだけでなくSACDやらCDやらレコード以外の手持ちのディスクの再生をすべて依存していたためそのまましばらく映画観る気力も音楽聴く気力も沸かなくなってました。あとちょうど放送中だった『まちカドまぞく 2丁目』で忙しかった。

フレンチ・コネクション』はそのうち記事にできるといいんだけど、これについて書くとなると『ブリット』→『フレンチ・コネクション』→『重犯罪特捜班/ザ・セブン・アップス』の流れと、それを踏まえて『フレンチ・コネクション2』はどうだったか、そしてそのフランケンハイマー監督はのちに『RONIN』で…みたいに風呂敷を広げたくなるのは目に見えていてなんならいざ書きはじめたら全然言いたいことを文章化できずに放り出すことまでわかるのでダメですね。

 

BDプレーヤーはすぐにでも買い替えたいんだけどここ数年人生どうでもEDMしてたので金がなく、しかたなく里に降りて民の仕事を手伝ったりしたものの人間のふりをするにもあれこれ入用なものでそのまま今日に至ってます。ふと気がついたら破れてない衣服をほぼ持ってない状態になってたりするの、わりとありがち。

BDP-170もたぶん電源まわりのコンデンサを交換すれば復活するんじゃないかと思うのでそのうち作業したい。

 

Fire TV Stick

金無いって言ったそばからAmazonプライムデーで異様に安くなってたので買ってしまったやつ。しかも複数買いで更に安くなるもんだから2つ。

そもそも知り合いにずっと「お前の環境だったらこれ使ったほうがぜったい快適だろ!」と言い続けてたのでそいつに買い与えるついでに自分のまで買ってしまった感じの事故。プライム会員になる気すらなかったのに。

まあせっかくなのでプライムビデオで『トップガン』とか『007/ドクター・ノオ』とか『まちカドまぞく』とか『まちカドまぞく 2丁目』とか観てたけどサクサク動いて非常に快適です。

いつか使ってないテレビかモニターにこいつをぶっ刺して24時間YouTubeナミブ砂漠ライブカメラあたりを垂れ流し続ける物体を作りたい。

youtu.be

 

『シン・ウルトラマン』と『トップガン・マーヴェリック』

『シン・ウルトラマン』は冒頭のウルトラQパートでなんかわからんがウルッときてしまい泣きながら観てた。一部ちょっとセクシャルっぽいギャグシーンは正直苦手なやつだったんだけど、仮にあれの対象が長澤まさみじゃなくて有岡大貴や山本耕史だったら手を叩いて喜んでただろうなとも思うのでまあ。

観た後しばらくはずっとこの映画のこと考えてたんだけどけっこう時間が経ったから忘れてしまった。

そういえばなんで『ウルトラQ』OPテーマって本来の音源だと中間部だか2つ目の主題だかを2回繰り返す部分が本編映像だと1回にカットされてんだろうと思ってたら、そもそもあのテーマには複数のバージョンが存在していてそれによって異なってたりするのね。

 

 

トップガン・マーヴェリック』はそもそも前作が数ある「サントラはさんざん聴いてるくせに本編観たことない映画」のひとつだったのでプライムビデオで予習してから行った。ちなみにこれ以外だとトム・クルーズの出てる映画って『アイズ・ワイド・シャット』くらいしか観たことない。

観たひとみんな言ってる気がするけど、あの前作からこんな面白い続編ができるのか……!というのが率直な感想。

前作だとヒロインに存在意義がないというより主人公マーヴェリックが妻子持ちのグースやクーガーと違ってそういう関係を構築できない(両親の問題を引きずってたり本人が精神的にガキだったりで)、せいぜい女の子は自分が調子いいときに楽しむ相手程度でむしろ軍隊という共同体中での気遣いや励ましをもとに再起する、みたいな印象だったところから、今作における中年の恋愛模様はあの主人公が年を経た姿としてしっくりくるとともに相手の娘がしっかり釘刺してくるの含めやっと落ち着くべき相手と落ち着いたというかこいつにも熟す機があったんやなぁという納得感や安堵感があってよかった(誰目線なんだ)。

戦闘機まわりの描写は詳しくないので細かいことはわからんけど、エリア88とかエスコンで見たやつを映画でやってる!と思いながらキャッキャしてました。

あとOPだけど、なんかあのシーン自体は前作を公開当時観てそれっきりだった人向けに空母上のなんか発進準備みたいなやつ見せつつ「Top Gun Anthem」からの「Danger Zone」をひと通りこなしておく感じでわりとおざなりというか、とりあえずノルマ消化しとくべ、くらいのものという印象だった。あるいは自分が前作の「「Top Gun Anthem」のまだギターが入ってこない前半部分をひたすら繰り返しながらむちゃくちゃ焦らした末の「Danger Zone」」って流れを思いのほか気に入ってたりするだけかも知れないが。

それとハングマンがジュークボックスでFOGHATの「Slow Ride」を選曲してたが当時ヒットしたとはいえ今でもアメリカだとわりと有名なんでしょうか。ルトガー・ハウアーアメリカ・デビュー作『ナイトホークス』のクラブシーンでも流れてましたねこの曲。

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この記事のオチ

なんも思い浮かばん。いやべつにオチなんかつける必要ないんですが。

 

 

Sounds of Silence / SIMON & GARFUNKEL (1966)

 

1966年1月17日リリースの2ndアルバムにして、実質的な再結成第一弾。

フォーク・デュオとしてのシンプルな編成とその範疇で可能な音楽に徹していた1stアルバムに対し、状況の変化もあって「フォーク・ロック時代のポップス」として大きく変化した内容になっている。

 

制作過程に紆余曲折あったがメインとなるセッションはニューヨークのCBS Studiosで、ボブ・ジョンストンのプロデュースにより行われた。

あとジャケットの写真はガイ・ウェブスターによる。

 

制作経緯

なにはともあれこのトラック。

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このアルバムは同曲のヒットを受けて急遽制作されたものなので、Wikipediaなどを参考にリリースに至る過程をざっとまとめてみます。

 

 

1964年、SIMON & GARFUNKELはトム・ウィルソンのプロデュースで制作された1stアルバム『Wednesday Morning, 3 A.M.』の商業的失敗ののち実質解散。ポール・サイモンは渡英し、アート・ガーファンクルは学業に戻った。

 

1964年5月、英Orioleレーベルからポール・サイモンのイギリスでの活動の取っ掛かりとしてなのかなんなのかJerry Landis名義でシングル「Carlos Dominguez / He Was My Brother」がリリースされる。これは1963年にポールがPaul Kane名義でリリースしたシングルと同内容のもの。

Columbiaとの契約が残っている都合で「Paul Simon」という名前が使えなかったのか、あるいはS&G以前からいくつもの名義を使い分けていた彼のことだし「Paul Simon」という看板は一旦おろして仕切り直すつもりだったのか。全然関係ないけど「Paul Simon」と「Paul Simonon」って紛らわしい。

1964年9月にそのOrioleのレコード工場がCBSに買収され、以降Orioleは段階的にCBSに吸収されていくことに。

 

1965年4月、ポール・サイモンアメリカに一時帰国し、アート・ガーファンクルとともにトム・ウィルソンのもとで「Somewhere They Can't Find Me」と「We've Got a Groovy Thing Goin'」の2曲を制作。

デュオとしてのシンプルなアレンジが中心だった1stと違いポップス的なバックトラックを伴うフォーク・ロックを見据えた内容だが、この段階ではあくまでお試しだったのか普通にボツったか、これといってリリースに向けた動きはなかったっぽい。レコーディング終了後ポールは再度渡英。

 

1965年6月、ポール・サイモンは元OrioleのCBSスタッフの推挙やColumbiaとの契約が残っていたことをきっかけに、CBSPaul Simon名義でソロアルバムを制作開始。

同じ時期、トム・ウィルソンはアメリ東海岸の学生向けラジオ局を中心にSIMON & GARFUNKELの1stアルバム収録曲「The Sounds of Silence」が人気を博していることを知る。そこで同トラックにエレキギター、ベース、ドラムをオーバーダブし、THE BYRDSやトム・ウィルソン自身がプロデュースしたボブ・ディランの「Like a Rolling Stone」など折からの流行であったフォーク・ロックのスタイルに仕立て上げることを画策。

 

同1965年6月、トム・ウィルソン主導でスタジオ・ミュージシャンによる「The Sounds of Silence」へのオーバーダブ作業が行われる。

ポール・サイモンアート・ガーファンクルは事前に知らされておらずトム・ウィルソンというかColumbiaの独断ではあったが、これはSIMON & GARFUNKELがColumbiaとの契約を残したまますでに解散状態にあり、今後の活動を望める状況になかったということも関係していると思われる。つまりトム・ウィルソンはともかく会社側としては、ちょっとでも売れてくれたらその分これまでの投資を回収できるから出さないより出したほうがまだマシ、くらいのものだったかも。

 

1965年7月、ポール・サイモンはジャクソン・C・フランクの唯一となるソロ・アルバムをプロデュース。ジャクソン・C・フランクはポールと同じアメリカ出身でイギリスに渡ったフォーク・シンガーで、当時ポールは彼の部屋で生活していたとも。

レコーディングにはちょうど渡英してきてたアート・ガーファンクルとアル・スチュアートも顔を出し、アル・スチュアートのほうはギターで参加もしている。

 

1965年8月、イギリスでCBSからポール・サイモンの1stソロ・アルバム『The Paul Simon Songbook』リリース。売上はそんなでもなかったっぽい。ちなみに当時S&Gの1stアルバムはイギリスでは未発売だった。

 

1965年9月、アメリカでトム・ウィルソン主導のオーバーダブが施されたシングル「The Sounds of Silence / We've Got a Groovy Thing Goin'」がリリース。ボストンを中心に好調な売れ行きでBillboard Hot 100に登場。

 

1965年12月、ポール・サイモンアメリカに帰国し、ボブ・ジョンストンのプロデュースのもとニューヨークのCBS Studiosで「The Sounds of Silence」をメインに据えたSIMON & GARFUNKELのニュー・アルバムが制作される。さすがにトム・ウィルソンは外されたのか、もうオーバーダブやるだけやってMGM Recordsに移っていた頃合いか。

突発的な事態でマテリアルが不足していたこともあってか5曲は『The Paul Simon Songbook』の使い回しとなった。またこの一連のセッションにおいて次のシングルとなる「Homeward Bound」も録音される。

 

1966年1月、「The Sounds of Silence」がとうとうBillboard Hot 100で1位を記録。1月のあいだTHE BEATLESの「We Can Work It Out」とトップの座を争い1位と2位をいったりきたりすることに。またこのトラックはアメリカだけでなく諸外国でも大ヒットを記録。

 

同1966年1月、アメリカでColumbiaからSIMON & GARFUNKELの2ndアルバム『Sounds of Silence』がリリースされチャートイン。以降継続的に売れ続ける。

1966年2月にはシングル「Homeward Bound / Leaves That Are Green」がリリースされこちらも大ヒット。アメリカでは続く3rdアルバムに収録されることになるが、イギリスでは数ヶ月遅れで発売された『Sounds of Silence』に追加収録された。

 

こんな感じ。なんというかもうちょっといい感じにまとめられなかったのか。

 

収録内容

A1「The Sounds of Silence」

上記の通り1stアルバム収録のトラック(のモノラル音源)にオーバーダブを施したもので、曲自体は『The Paul Simon Songbook』でもとり上げられている。タイトルはリリースによって「The Sound"s" of Silence」だったり「The Sound of Silence」だったり。

小学生の頃の自分はこのトラックのヴォーカルとバックトラックのズレを「下手くそwww」と笑ってるクソガキでした。

しかし実際のところはむしろ逆で、元になった演奏がこの時期のフォーク系アーティストのものとしては整ったリズムを持ち、さらにスタジオ・ミュージシャンたちの能力が十分に高かったからこそ後から演奏を加えることが可能だった、つまりどうにか辻褄を合わせることができた、ということなのだと思う。

 

A2「Leaves That Are Green」

『The Paul Simon Songbook』から。小学生の頃からイントロのハープシコードが好きで気に入ってる曲。なんか自分、ガキの頃から今に至るまで楽曲総体としてよく作り上げられているかよりもそのトラックに含まれる断片的なフレーズや音色が気に入るかで音楽を判断しがちですね。

歌詞がカースティ・マッコールで有名な「A New England」に引用されている。

 

A3「Blessed」

前作ではけっこうストレートにクリスチャンな歌を演ってたのにいきなり皮肉っぽくなってんのは心境の変化があったのか正体現しただけなのか。

トラックのほうはなんというかいかにもフォーク・ロックのLPの3から4曲目あたりに入ってそうな感じ。

 

A4「Kathy's Song」

『The Paul Simon Songbook』から。ポール・サイモンのギターとヴォーカルのみというシンプルな弾き語り曲。

 

A5「Somewhere They Can't Find Me」

SIMON & GARFUNKELとしての活動が暗礁に乗り上げていた1965年4月に制作されたトラックの片割れで、1stアルバムのタイトル・トラック「Wednesday Morning, 3 A.M.」の歌詞にサビを加えて「Anji」の土台に乗せたもの。

長いこと原曲の繊細さが失われた乱雑なポップスという印象で嫌ってたんだけど、管とエレピが都会的な雰囲気を醸し出すどことなく曇ったようなサウンドのものとしては別に悪くもないかもしれないと思い直しつつある。

 

A6「Anji」

ポール・サイモンのギターテクニックが楽しめるアコースティック・ギターによる小品。デイヴィ・グレアムの楽曲だけど、このアルバムの初期盤ではタイトルが「Angie」、作曲がバート・ヤンシュとミスクレジットされていた。

実際ここでのポール・サイモンの演奏はあきらかにバート・ヤンシュのバージョンを踏まえていて、そのバート・ヤンシュのアルバムでは曲名が「Angie」になっていたので、そのあたりで取り違えがあったんだろう。

ポール・サイモンはロンドンでこのふたりと交流があったらしく、もし「The Sounds of Silence」の思いがけないヒットが転がり込まなければ、あのまましばらくイギリスに居着いてブリティッシュ・フォーク系の人脈と関わりを深めていた可能性があったのかもしれない。

 

ここから突然の動画連貼りとなります。

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元祖デイヴィ・グレアムのバージョン。1962年。

 

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バート・ヤンシュのバージョン。1965年。

全体的にオリジナルより過激になっていて、途中ナット・アダレイ「Work Song」のフレーズを挿入している。

 

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ポール・サイモンのバージョン。いろいろ手を加えてるけど「Work Song」は踏襲。

 

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そしてこれがポール・サイモンがふたりに分裂していた時期の映像記録。

 

んで録音時期こそ前後するけど、こういうロンドンでの交流があったうえでA5「Somewhere They Can't Find Me」とB4「We've Got a Groovy Thing Goin'」がレコーディングされている、ということになる。正直あの時点ではアルバムどころかシングルになるかどうかも定かじゃなかっただろうし、適当にそのとき取り組んでた曲のフレーズを使いまわしたんじゃないかと邪推してしまう。

 

 

B1「Richard Cory」

これとか「Blessed」とか、曲の取っ掛かりになるエレキギターのリフを軸にワンアイディアで押し切らずにちょっと捻った進行を用意して、と、この時点でのSIMON & GARFUNKELに求められていたであろうフォーク・ロックしいてはポップス的なトラック作りを試行錯誤してる印象。

歌詞の方はリチャード・コリーを羨む工場勤務の主人公を羨む工場のバイト面接に落ちた俺ってわけ。ゆるさんぞ

 

B2「A Most Peculiar Man」

『The Paul Simon Songbook』から。アコギ伴奏にオルガンを被せて他の楽器を加えた結果ソフトロックっぽく仕上がったようなトラック。

歌詞は異常独身男性についてで、余計なお世話じゃいという気分になれる。最初この記事に取り掛かったときはガス自殺についてあれこれ書いてたんだけど『ミッドサマー』に話がそれて収集つかなくなったので全部カットしました。

 

B3「April Come She Will」

『The Paul Simon Songbook』から。アート・ガーファンクル単独のヴォーカルにギター1本の伴奏で、A面の「Kathy's Song」に対応したアルバム構成なのかもしれない。

昔は中学校あたりで英語の暦を覚えるときよく引き合いに出されてたような、そうでもないような。

B面ここまでの3曲すべて登場人物が死んでるの、若い頃はわりとさくさくキャラを殺してた作家が年齢とともにあんまりそういうことしなくなってくやつっぽくてちょっと和みますね。

 

B4「We've Got a Groovy Thing Goin'」

1965年4月に制作されたもう一方のトラックで「Work Song」に歌詞乗っけてでっち上げた感じのもの。

正直1965年4月のトラックは2曲ともそこはかとないやっつけ感があって、ポール・サイモンあんまやる気なかったんじゃないの?とか思わないでもない。

 

B5「I Am a Rock」

『The Paul Simon Songbook』から最後の刺客にして稀代の引きこもり賛歌。

A面のラスト2曲とB面ラス前の「We've Got a Groovy Thing Goin'」がどれも「Anji」ネタでなんとなくアルバムがまとまっているかのような雰囲気を出しつつ〆の1曲。

「Homeward Bound」のあとにシングル・カットされけっこうヒットした。

KING CRIMSONの「Islands」ってこれに対するアンサーソングだったりするような、共通のモチーフというだけのような。

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A面6曲でB面5曲と、微妙に曲が足りてないのが当時の状況を偲ばせる。

内容の面でも傑作ぞろいのSIMON & GARFUNKELのオリジナル・アルバムのなかでは多少曲ごとの出来栄えに差があるように思えてしまう、というのが正直なところ。ただ「April Come She Will」や「I Am a Rock」は自分には子供の頃から当たり前にあった普遍的な音楽すぎて逆に評価のしようがない、というのもありそう。

 

 

レコード

なんか2枚持ってるしせっかくなんで裏面も。左が国内盤で右がイギリス盤。

 

手持ちの盤その1。「Homeward Bound」がB面頭に追加収録された英モノラル盤。

モノラル盤が欲しかったんで見かけたときに確保してみたんだけど、あんま良い音とは言い難く、B面はずっと電波状況が微妙に悪いときのラジオみたいな一定のノイズが乗ってる。偽モノ*1だろうか。

 

なぜか2つ付いてた内袋。片方はプレーンでもう片方はCBSの広告入り。載ってるアルバムの感じからしてリリースから数年後に生産された盤だと思われる。

 

 

手持ちの盤その2。ジャンク屋で拾ったCBS/Sonyのステレオ国内盤。

盤質も音質も良好で安定感があり、自分が子供の頃から家にあったリマスター以前の国内盤CDとほとんど同じような鳴り方をする。

マトリクスは見てないけど、まあ米オリじゃないしあまりにも馴染み深い音だからこれ以上は深堀りしなくていいや。

 

ジャケットはゲートフォールドで歌詞インサート付き。

見開きにはなんか序文みたいなものとか各曲の歌詞とコメントの和訳さらに追加の文章が載せられている。家にあったCDのライナーノートにもまったくおなじものが転載されてたのでやたら懐かしい。

 

1968年に設立されたCBSソニーレコード株式会社が自社工場で最初に生産したレコードはこの見開きにも載ってる『卒業』オリジナル・サウンドトラックで、それが出荷されたのは1969年3月頃らしい。この『Sounds of Silence』も1969年のうちに早速生産され始めたんじゃないかと。

ただし1969年3月時点でのレーベル・デザインはおそらく上に載せた英盤に準じたオレンジ一色のものだったはずで、手持ちの白とオレンジのものに変更されたのは数ヶ月から下手すれば1年以上後だったと思われる。

とりあえずこの盤が1969年3月から1973年に社名が株式会社CBS・ソニーとなるまでの間に製造されたものなのは確か。たぶん『Bridge Over Troubled Water』リリース後もこっちのジャケットは『Bookends』までのままこれといって変更はなかったんじゃないだろうか。

 

 

リマスターとか配信とか

Sounds of Silence (Exp)

Sounds of Silence (Exp)

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2001年にSony MusicのLegacyレーベルからVic Anesiniのリマスターで再発された。クレジットが「Mixed and Mastered by Vic Anesini」となっててすわリミックスかと慌てたんだけど、たぶんボーナス・トラックは今回ミックスしたってことなんじゃないかと。

とりあえずそのボーナス・トラックは4つ入り。

 

「Blues Run the Game」

ポール・サイモン自身がプロデュースしたジャクソン・C・フランクのカバーで、1965年12月のレコーディング・セッションのアウトテイク。1997年にボックスセット『Old Friends』で蔵出しされたもの。

原曲が良くてそれをそのまま演ってるからいい感じに聴けるけど、デュエットが活かされているわけでもないのでまあアウトテイク。

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これはポール・サイモンがプロデュースしたオリジナル。自動生成のオフィシャル音源でリマスターと銘打ってる割に音質が微妙なんですけど、マスター・テープがお亡くなりになってたりするのだろうか。

 

残り3曲はこれまで未発表だったもので、すべて民謡をギター伴奏でとりあえず演ってみた感じのもの。

1970年7月8日、つまり最終作となった『Bridge Over Troubled Water』より後、ラストコンサートの10日前の録音となる。なんでそんな時期の音源をこのアルバムのボートラに……?

ふたりの人間関係が完全に終わってた時期と思われるけど、演奏自体は自然体で悪くない。

これら3曲はJen Wylerによるミックス。

 

「Barbriallen」

チャイルド・バラッド84番でラウド54番「Barbara Allen」。この後アート・ガーファンクルが1stソロ・アルバム『Angel Clare』でとりあげた。

 

「Rose of Aberdeen」

ラウド12708番「Rambling Gambler」。

 

「Roving Gambler」

ラウド498番。

 

 

Sounds Of Silence - Album by Simon & Garfunkel | Spotify

geo.music.apple.com

今作も2014年から各種サイトで24bit-192kHzのハイレゾ音源が配信され、現在SpotifyApple Musicにあるのも基本的にこれだと思われる。Spotifyは相変わらず非可逆圧縮だけでApple Musicはハイレゾ

音源の素性はよくわからんけど音質はいいと思う。クッキリしたVic Anesiniリマスターと比べると気持ちアナログ・マスターに近い柔らかさのあるサウンドな気がするけど先入観もありそう。

 

 

*1:ステレオ・ミックスの音源を擬似的にモノラル化して発売したものの通称。わりとよくあった