SONY UBP-X800M2(前編)

 

以前使ってたBDプレーヤーが壊れて以降あれこれ検討したりしなかったりした結果、ソニーのUBP-X800M2というプレーヤーを購入しました。

 

 

とりあえず自分がこれ系のプレーヤーに求める条件を書き出すと、

  • BD、DVD-Video、CDに加えてSACDのマルチチャンネル層を再生したい

……以上ですね。箇条書きにすることなかったわ。

 

このプレーヤーはそのSACDに加えてなんとDVD-Audioの再生にも対応しているというのが最大の魅力でありセールスポイントと言っても過言ではないだろう。統計でいっても自分の周囲でこの機種を買ったのは自分ひとりで自分はDVD-Audio再生が決め手だったからつまり100%、購入者全員がDVD-Audioの再生を視野に入れてこの機種を選んでいるということになる*1

 

AV情報関連のサイトとかを見るとだいたいエントリークラス的なポジションだけどソニーが国内で販売しているプレーヤーのなかではハイエンドというよくわからん位置づけで、長らくデジタルで出力しちまえばなんとかなるやろと安物BD/DVDプレーヤーしか使ってなかった自分にはちょっと高い買い物となります。

ソニーのAV機器ラインナップってデノンとかヤマハみたいに安いのから高いのまでずらっと取り揃えてるんじゃなくて、最上位機種でその2メーカーでいうところの中堅どころあたりの「最新の機能がだいたい揃ってて性能もお値段もそこそこ」ぐらいな感じなのですね。いちばん高いAVアンプでもDSDのダイレクト再生に対応してないのがちょっとさびしい。

 

というわけで着弾。本体は薄さのわりにけっこうずっしりしてて低価格帯の機種との作りの違いを感じる。

がんばって設置したけど前面のツヤツヤしたパネルにスマホのカメラをかまえた不審者や床に散らばった洗濯物が映り込むので本体の写真は無しの方向でお願いします。

 

UBP-X800M2の出力端子はHDMIと同軸のみでアナログ出力をすっぱり切り捨ててしまっている。かわりに通常のHDMI出力に加えて音声信号専用HDMI出力というマニアックなものを搭載しているのですが、とりあえず今のところはAVアンプと普通にHDMIケーブル1本で接続しただけで試してないです。

あと本体前面にちっちゃい電源ランプ以外なんの表示窓も無いのでオーディオ目的で購入された方々には不評っぽいけど、デスクまわりにパソコンやらオーディオやらをひとまとめにしてる自分は特に困ってない。

 

 

CD/SACD/DVD-Audio

とりあえず手近にあったそれぞれ特徴がありそうな音楽ソフトたちをあれこれ再生。

 

小室哲哉とMR. BIGはマジでこのときちょうどそこにあっただけ*2なのでスルーとして、ブーレーズのハルサイとLa Spagnaを再生してみたらあきらかに以前と比べてノイズが減って鳴らしやすくなっていてびっくりした。

 

自分が使ってるAVアンプはYamahaのRX-V479という当時非常にお安く入手できた機種で、機能的にも性能的にもかなり健闘しているとはいえやっぱりお値段相応の非力さがある。

これと低価格帯のBD/DVDプレーヤーでそれこそ写真のブーレーズのようなダイナミックレンジを広くとった録音を再生すると、ボリュームを上げていっても十分なレベルに達する前に「サーッ」という高音域のノイズが大きくなって聴けたもんじゃなくなってしまい鳴らしきれない、という感じだったのですよね。

自分はこれをどちらかというとAVアンプの出力不足が大きな原因と受け止め、まあ安かったし仕方ないよな〜そのうちもう一段くらい上のグレードの機種がほしいもんですねぇとか考えてたんだけど、プレーヤーをUBP-X800M2にしたらなんかノイズが無くなって静かになってしまいました。

これならクラシックの初期デジタル録音とかの、アナログ録音に比べてノイズが少ないからってダイナミックレンジ極端に広くとったらがっつり音量上げて鳴らさないと(かつそれが可能な出力のある再生装置じゃないと)ぼんやりした音でしか再生できなくなっちゃいましたみたいな音源でもわりと対応できるんじゃないかと。正直「安いプレーヤーでもデジタル出力できればだいたいOK」という気持ちでやってきた自分にはちょっとショックですらある*3

 

ブーレーズストラヴィンスキー春の祭典』1992年盤はもうちょっと音量バランスとかがこなれた時期のものではあるんだけど、これはこれでスピーカーにしろヘッドホンにしろある程度以上出力に余裕がある再生機器でしっかり鳴らさないとオーケストラが実際に鳴らしてる音よりそれに付随する響きの印象が強くなって、なんとなくぼんやりした「ヌルい」演奏という感想になりがちだと思う。

それなりの音量で鳴らしてるつもりのところからさらに思い切ってぐいっと音量を上げていくとある段階から演奏のディテールや中低音の質量と残響のバランスがとれてダイナミックな鳴り方をするようになる、んだけどそうそうそんな大音量再生できるもんじゃねーよという。この時期のDGとかあるいはTelarcやLinnあたりの「残響過多」「残響に癖がある」と言われがちな録音って、その残響と楽器の実音のバランスがとれるところまで音量を調整してったときに本領を発揮するんじゃないかと思いつつ、それってかなりの音量ということであり、ちょっと自分にはどうしようもない感じ。

そういった諸々を踏まえてブーレーズのこの録音は現代オーケストラのダイナミズムにそれこそストラヴィンスキー本人の録音に通じるあの楽曲本来の舞曲としての軽快さを取り込んだ、ガチガチだったりやたら力押しだったりというのとはまた違った意欲的なものなんじゃないかと思う。

ところでおなじブーレーズクリーヴランドの組み合わせで名盤と名高い(頭痛が痛いみたいな書き方しやがって)旧録音とおなじ1969年に『春の祭典』を代表する名演と言ってしまいたいエルネスト・ブールと南西ドイツ放送響の録音が存在していて、昔だったら聴こうと思ってもそうそう音源を入手できるものではなかっただろうけど今ならサブスクとかでほいっと再生できるのでみなさんぜひ聴いてください。

 

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ブールがボウルになってるの、以前ミヒャエル・ギーレンがマイケルくんになってたのとおなじ味がする

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こっちはフランスものというかパリものCDセットで、3枚目のディスクが上のアルバムと同一内容

 

閑話休題

 

アップスケーリング

UBP-X800M2にはCDの16bit/44.1kHz音源(および圧縮音源)をハイレゾ相当までアップスケーリングする「DSEE HX」という機能も搭載されてるんだけど、目隠しをして他人にオンオフを切り替えてみてもらったりしたわけじゃないので「なんか・・・良くなった・・・気がする・・・!」以上のことは言えない。

写真のブーレーズ小室哲哉で試した感じ、この機能を使ってると残響というほどには離れきってない実音の周囲に付随する響き(それってやっぱり残響では?)がよりなめらかで柔らかくなったような……特に音量を上げていった際にそれがはっきりするような……でもべつにCDそのままでもわりとそういう感じなような……

どちらかというとCDより圧縮音源を用いた動画等の再生時に効果的なのかもしれないけど今の所あんま実感できる使い方をしてません。

 

SACD

La SpagnaのSACD層ですが、低価格帯AVアンプであるRX-V749は当然ながらDSDのネイティブ再生には対応していないのでプレーヤー側でPCM変換して出力しています。

RX-V749もDSDをPCM変換しながらの再生に対応しているけど処理能力の問題なのか高音域にずっと「サーッ」って他のメディア再生時より大きめのノイズが存在し、たまに「プツッ」ってノイズが入ったりもする。

※書き上げてから気づいたんだけど、これもあるいはAVアンプじゃなくて前のプレーヤーのDSD出力の限界だった可能性があることを失念してました。

UBP-X800M2側での変換はさすがにノイズもなく静かで安定していて、欠点はハイブリッドSACDの再生する層(マルチch層/2ch層/CD層)を切り替えるのにいちいち設定画面に入らなきゃならないことくらい。

あとUBP-X800M2側でDSDをPCM変換して再生したところAVアンプ側の信号情報は「176.4kHz」表記になってました。これはDSEE HXを切り替えても変わらず。なおこのAVアンプは信号情報の表示画面にビット深度が出ない。

AVアンプとプレーヤー間はHDMI接続だからこの品質として同軸出力の方だとどうなるのか気になるところではあるんですが、それを確認するためにわざわざ普段使わない同軸を繋げてあれこれやるのが億劫なので手をつけてません。

 

いちどSACD2ch層を再生する際にステレオの片方のチャンネルだけが両方のスピーカーから再生される疑似モノラルみたいな変な状態になったのだけど、AVアンプ側を再起動したら治ったのでそっちの問題かもしれない。

再生してたのがちょうどモノラルとステレオが混在しているTHE ROLLING STONES『Singles Collection: The London Years』のDisk 2からDisk 3にかけてだったんでしばらく「あれ、モノラルだとミック・テイラーのギターめっちゃ音小さいんだな」とか「やっぱこっちのOut of Timeはモノラルだと自然だよな」みたいな感じで気が付かなかった。

 

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正常な状態で再生したOut of Timeは残念ながら?この通りのステレオ・ミックスだった。まあこのミックスにどうこう言うんだったらふつうにクリス・ファーロウの聴けよという話ではある。

 

DVD-Audio

といったところで本日のメインディッシュであるDVD-Audio、とりあえずはKING CRIMSONの『In the Court of Crimson King』40周年盤(の5.1chリミックス音源)なのですが、いや最高ですね。

 

ちゃんと「DVD-AUDIO」として認識してる証拠写真。“待って”たぜェ!!この“瞬間(とき)”をよぉ!!*4

DVD-AudioとDVD-Videoは設定画面から切り替えられます。

 

ぶっちゃけ「CDとハイレゾ」みたいな微妙なものやなんなら「きっちりエンコードされたmp3やAACロスレス」みたいなのと比べてDolby DigitalやDTSとロスレスだとわりと違いが出るので逆に「高音域の伸びやかさや滑らかさがぜんぜん違う」という当たり前のことぐらいしか書けない面もあるんですがそこはそれ。

とりあえず「Moonchild」インプロ前半でリアスピーカーまで展開するヴィブラフォンの響きが、以前のプレーヤーでDTS再生した際には完全に限界状態でノイズまみれになってたのがUBP-X800M2でMLP Lossless再生だと綺麗に(録音段階からある程度歪んでるけど)鳴らしきれる!うれしい!!気持ちいい!!!現場からは以上です。

でもちょっと冷静になって確認してみたらそもそもプレーヤーが良くなった結果DTSも以前と比べてかなり健闘するようになってますねこれ。MLP Losslessと比べるとあきらかに高音域がガサガサしてて残響が伸び切らずにかき消えてしまう感じがするけど、それでも24bit/48kHzなだけのことはあった。

 

ちょうどこのUBP-X800M2導入にあわせてAV機材詰め込んでる棚の配置とかを再検討してる*5ので、それが終わったらサラウンドのセッティングをやり直してあらためていろいろ聴いてみます。あと関係ないけどクリムゾンの最高傑作は『Lizard』か『Larks' Tongues in Aspic』で選べない派です。そんな中途半端な派閥あるか?

 

プリエンファシスCD

ついでに引っ張り出してきて確認したプリエンファシスかかってるCD。

このREO SPEEDWAGON『Hi Infidelity』は1982年10月1日に日本でリリースされた、つまり世界で最初に発売されたCD数十タイトルのうちの1枚。この時期のCDはプリエンファシス仕様になってるものが多いんじゃないでしょうか。

プリエンファシスCDはものすごくざっくり言うとレコードでのイコライザーカーブとおなじ、高音域をわざと強調した状態でディスクに記録しておいて再生時にそれを復元することで音質の劣化を避けるというCD初期にあったやつで、プレーヤーの性能が良くなるとともに必要なくなった的な流れだったと思った。

 

再生してみたら画面上にこれといった表示は出ないながら、聴いた感じちゃんとデコードされたまともなバランスの音になっている。

多少まったり気味だけどそれなりにクリアで伸びやかな高音域と、小音量だとスカスカだけどボリュームを上げていけばそれなりに厚みの出る中低音で、手持ちのUS盤レコードのドンシャリ系爽快サウンドとはまた違った綺麗な音作り。いま聴いてもけっこう楽しめるというかこれあきらかにプレーヤー自体が良くなった恩恵を受けまくってるな。

ちなみに本来のエンファシスはアナログ回路でもって処理する想定のものだったはずで、本機を含め現在のプリエンファシスCDに対応している機器はおそらくほとんどがデジタルでその処理を再現してると思われるので、そのあたり気にする人は気にするのかもしれない。

 

続く

ほんとはDVD-VideoとかBDとかあえて目を背けてきた他の機能とかについて書いておきたいんだけど、いつまで経っても着手できずここまでの内容すら放置しすぎて9月中にアップできなかったのでとりあえず投稿しちゃいます。水星の魔女みたら続き書くから…あっでも最近労働で体力削られるあまりFGOも触れてなくて…イベントは参加できなくてもガチャだけは回すのが自慢だったのに前回はそれすらできなくてですね……

 

 

*1:そもそも俺の狭い交友関係内でレコーダーでもなけりゃゲーム機でもない再生専用機なんて持ってるやつがほぼいないという説もある

*2:MR. BIGはこの前届いたばっかり、小室哲哉は知人に「歌手としてもフローレンス・フォスター・ジェンキンスと並ぶ逸材」とかテキトウなこと言ってプレゼンしたとこだった(どっちに対しても失礼すぎる)

*3:「こ、こんなの覚えさせられたらもどれなくなっちゃうっ……(ビクンビクン」とか書きかけたけどさすがに自制心が働いた

*4:とはいえDVD-AudioってSACDやBDと比べれば多少は融通が利くメディアなわけですが

*5:「ラックあっちに動かすか〜」となにげなく引っ張ったらケーブルの長さが足りてなくてあわや落下事故だっただけ